燃料コックのハナシ (高速巡航時のガス欠症状) 

本来、シングルであろうとマルチシリンダーであろうと燃料コックはひとつあれば十分なハズです。

それでは何故左右に装着されている必要があるのでしょうか?

 

ミュンヘン時代後期のBMWモデルにはタンク左側にひとつ燃料コックが装着されていました。

ダブルクレードルフレームが採用されていてタンク内側のえぐり(トンネル)が深いので

タンク右側の燃料だけが残ってしまうようになりました。

そのためタンク底部に左右連結の燃料ホース(イコライザー)が装備されています。

燃料タンクを空にしないと脱着できないため整備などの際には大変不便でした。

また連結ホースの劣化などで燃料洩れを起こせば止める手段がないため危険でもありました。

 

1969年にベルリン工場から新モデルシリーズ(旗艦はR75/5)がリリースされました。

このモデル以降の旧OHVモデルには左右に燃料コックが装備され連結ホースも設定されているため

片側コックのみ開放しても左右キャブに燃料が行き渡ります。

 

1978年に軽量クラスのR65シリーズがリリースされました。このモデルのタンクは後端部の形状を

見直したためタンク左側のみの燃料コックで対応しています。

(スケールダウンモデルのR45や外装を共有しているR80G/S、R80STも同様)

シングルコックはコストダウンの意味合いもあると思いますが1000ccモデルよりも燃料供給を必要と

していないためでしょう。左側に装着されている理由はサイドスタンドの位置に合わせたものです。

 

国産リッターバイクの燃料コック吐出量と比較してBMW用が劣っているとは思えませんが燃料供給を

阻害する要素がいろいろとありますのでトラブル防止の意味合いで高速巡航走行時には左右コックをオンにしましょう。特に極限状態(高回転走行時)でガス欠症状が続くと燃料希薄で燃焼温度が上昇して焼き付きやピストン穴明きなどを起こすことがあります。

 

高速巡航でのガス欠症状の伏兵は燃料コックメッシュフィルターの詰まり、パイプの折れ・潰れ、ベンチレーションホースの折れ・潰れ、燃料ホースの曲がり、フロートレベルの調整不良などもあります。

 

リザーブ燃料を長期間使わないと水分や異物がタンク下部に溜まり、リザーブにした途端にエンジン停止や

オーバーフローを発生させて走行不能になりますので燃料が充分にあるときにも偶にはリザーブで走行して燃料の入れ替えを行います。また整備書では5万キロごとに燃料コックの清掃を勧めています。

 

なかにはドゥカッティのシングルモデル(450デスモなど)のように燃料コックにオンとオフしかないため

(リザーブがない)左右ともオンにしているとガス欠で押すハメに・・・