★フランス製セルモーターの故障原因について
故障は日本の交通事情という特殊要因も影響しているように思います。
このフランス製セルモーターの故障に関しては多発していることもあり多方面から
いろいろな意見、報告があります。自分なりに納得できそうな内容にまとめてみました。
1969年から1988年までのモデルに装着されていたボッシュ製セルモーターはパワーこそ
なかったけれどほとんどメンテナンスフリーでした。ボッシュ製品の生産中止に伴い、1989年モデルから
フランス製品が装着されています。明らかにパワーアップしていますがコストダウンの影響が深刻で評判は
よろしくありません。これはドイツ本国でも同様で故障が多いようです。
構造上の問題
本体固定方法: ボッシュは本体の前後でボルト固定されるがバレオはピニオン側のみボルト固定されている。
重量に大きな違いがあるので単純に良し悪しを判断できない。
センタリング: これが一番の問題点です。ボッシュはシャフトが貫通しているのでアーマチャーコイルの
芯振れが起きない。フランス製はコストダウンのためか分割式になっている。オーバーランニング
クラッチ側は遊星ギアでセンタリングしているだけなので遊星ギアにガタが出るとアーマチャーコイル
の芯がズレてマグネットと接触する。
H15/2月分解検証:
01、軸受け部はブッシュになっているので芯振れ起こりそうにない。
02、このセルモーターは遊星ギアを組み込んだリダクション(減速)式になっています。
減速比は目測5.5:1になっている。つまりピニオンギアが一回転する間にアーマチャーコイルは
5回転半回転している。ボッシュ製アーマチャーコイルの5.5倍速で回転している。
ステーターコイル: ボッシュはステーターコイル式(電磁石)でハウジングにボルト固定されている。
フランス製はマグネット式で接着剤でハウジング本体に直接貼付されている。スリーブ挿入、
フレーム固定などの剥離防止対策をとっていないのでアーマチャーコイルの芯がずれてマグネットに
接触するとマグネット剥離を促進される。
温度上昇: たとえ低速であっても走行さえしていれば電装空間(イグニショントリガー、オルタネーター、ダイオードボード、セルモーター)に通風があるので温度上昇は押さえられます。市街地走行や渋滞中の
ノロノロ運転では通風が望めません。したがって油温も電装品の温度も上がる一方です。ダイオード
ボードは放熱不足からパンクします。冷却フィンを持たないオルタネーターのローターは熱による膨張で
断線の危機を抱えています。セルモーター本体のケーシングはスチール製で温度変化で膨張・収縮を繰り
返します。接着剤固定なので剥離を促進させる
振動: セルモーター本体の固定はボッシュ製が本体前後で固定しているのに比べて、フランス製はリング
ギア側のみの固定である。フランス製は軽量なので単純には判断できないが本体稼動時の固有振動と
エンジン振動を吸収できるものか不安である。5シリーズ以降のモデルはエンジン固定に下部2個所を
マウントボルトで固定しているだけです。クランクシャフトアクシャルより一番離れたセルモーターには
それなりの振動が伝わります。
トルク変動・バッテリー状態・使用サイクル: 乗用車と比較して圧縮比が高い上、ツインのため圧縮抵抗の
ある個所との差が激しい。バッテリーが元気で助走(圧縮行程に向かう角度)が充分ならば問題なく
クランキングしても充電不足からバッテリーにパワーがなくなっていると圧縮行程でストレスが溜まり
ます。 回転に勢いがないので点火してもなかなか始動に繋がらず、結果何度もセルを回すハメに
なります。
★対策
始動方法: 確実な始動方法(チョークの使い方、空キックの併用、スロットルの開け方など)を習得して
セルモーターやバッテリーの負担を減らす。高性能充電器の利用で常時フル充電状態に
充電系: 劣化したバッテリー、粗悪なバッテリーの使用を止める。 レギュレータ、ダイオードボード、
マウントボルトの交換などで適切な充電が行われるようにする。ヘッドライト、ストップライト、
グリップヒーターの使用方法を再検討する。